メランコリア

アンチクライスト』に続いてこれまたいい。メランコリックで好い。
あれほどワケわかんない突き抜け方はしてないんだけど、それに負けない大袈裟なハッタリが、笑っちゃうほど清々しい。特にラストの潔さは絶品。

フィルムに刻まれた憂鬱は、見ていて帰りたくなるほどウンザリするものなんだけど、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」の頃のあざとさとは違う、胸を打つものになっていると思う。「アンチクライスト」以降のトリアーはハネケなんかよりずっといい。

自身の環境をロマンチックに演出することによって、苦悩から逃れようとする主人公のキルスティンがいたたまれない。(普通に)生きることって苦しみは、誰しも大なり小なり感じたことがあるものだろうから、感情移入させまくりな映画にも出来たんだろうけど、そうはトリアーがおろさない。いたたまれないけど、とにかく不快。他の登場人物たちもことごとく不快。シャーロット・ランプリングなんて、不快を超えて恐ろしい。こう感じの悪い監督は、他にはそうないんで、どーも応援したくなってしまう。

『ツリー・オブ・ライフ』と一緒で、要はセカイ系なんだけど。
DVDも出たし、うろうろ彷徨うだけのショーン・ペンがまた見たくなってきた。




2012年2月17日 日本公開/デンマーク/130分
監督:ラース・フォン・トリアー/出演:キルスティン・ダンスト、C・ゲンズブール