「哀しき獣」「テトロ」

やっと公開された「テトロ」の初回に間に合わず、しょうがないので先に「哀しき獣」を川崎で。FILMeXでやってた「チェイサー」のナ・ホンジン最新作。

とても力の入った作品だった。骨と斧を振り回す狂犬ミョンを演じたキム・ユンスクが面白い。ハードな韓国映画が好きな人にはお薦め。

ただ最近どうもスピーディーなカット割りとか、臨場感溢れる手持ちカメラってのが苦手なようで、それが延々と続くアクションシーンを見てると眠くなってしまう。堂々たるバイオレンスシーンに比べて、カーチェイスでは誤魔化されてるような感じ。特に後半はそれが顕著だった気がして意識が…。

それと140分はどうにも長い。キム・ユンスクが凄まじいせいか、ハ・ジョンウ演じる主人公グナムに「エッセンシャル・キリング」風な味付けをして、身体性を強めようとしてるんだけど、そのシーンは全部要らないと思うんだよね。コスプレはいいにしても、雪山とかさ。せっかく前半にいい走りをみせたり、ハ・ジョンウはかなり頑張ってるんだから、ちゃんと信頼して中途半端に他所から持ってきた味付けとかしない方が、主人公としての存在も強まるし、作品もタイトになって良くなったんじゃないかなあ。

ちょっと頭でっかちに見過ぎた気もするけど。



2012年1月7日 日本公開/韓国/140分
監督:ナ・ホンジン/出演:ハ・ジョンウ、キム・ユンスク


そのまま六本木に移動して「テトロ」。ずっと見たかったコッポラ最新作。
来月にはDVDでるし、あまりに寂しい公開のされ方だけど、
とにかく必見の、コッポラの新しい最高傑作だと思う。

淡いモノクロで描かれる、なんてことない家族の物語がこれ以上ないスケールで襲いかかってくる。映画ってこんなに面白かったのね、ってことを再認識させてくれる、コッポラ本気汁出まくりの一本。

パレルモ・シューティング」のヴェンダースとはまた違った方法で、コッポラは世界を変える。コーヒーとタバコ、いやタバコとコーヒーか。タバコを立て、真上からコーヒーを映す。このショットのスマートさ、カッコよさ、臆面のなさ、どうだい?って感じ。
もーたまらんわね。
ほかにもね、オープニングから本当うっとりするようなシーン(映画)の連発。
映画につぐ映画。嬉しくなってしまう。
彼はテトロなのかコッポラなのか。たぶんテトロで、たぶんコッポラなんだわな。

シネマート六本木では一週間の限定公開中。是非。




2012年1月7日 日本公開/アメリカ・アルゼンチン・スペイン・イタリア/127分
監督:フランシス・F・コッポラ/出演:ヴィンセント・ギャロ、アルデン・エーレンライク